言霊（ことだま）使いのイシス

スターシードの皆さま、こんにちは✡

オシリス神話をちゃんと読み返そうと思って図書館で借りてきた本に「太陽神ラーとイシス」という興味深い神話がありました。

有名な女神イシスは、このお話では元は人間ということになっています。

しかも「言霊使い」よ！

ちゃんと起承転結になってる短いお話なので、サクッとご紹介しますね。

「エジプトの神話」（「世界の神話2」　筑摩書房　1983年）より

太陽神ラーとイシス

　

イシスははじめ言霊（ことばの神秘的な力）を持つ人間の女でした。

彼女は多くの人間たちの世話で疲れてしまい、神々をうらやましく思いました。

そこで彼女は心のなかで言うには、

「わたしは神の神聖な名によって、天のラー神のような女神になることでしょう。」

ところで太陽神ラーは毎日神聖な船に乗って天空を横切り、二つの地平線のあいだを行ったり来たりしていました。

こうしているうちにラー神は年をとり、よだれをたらすようになりました。

　

イシスは地上にしゃがんで土をとり、これで槍の形をした神聖なヘビをつくり上げました。

それからこれを、地の上方の太陽神が通るところにおきました。

　

さて、太陽神が起き上がり、他の神々がこれに従っていつものように天空を進みはじめました。

ところがその途中で、神聖なヘビが太陽神にかみつきました。

太陽神は口を開いて大声を発しましたので、その声は天じゅうにひびきました。

神々はこれを聞いて、何ごとが起こったのかと大さわぎになりました。

太陽神の体に毒がまわり、あごや手足がふるえました。

太陽神は神々を呼びよせて、その苦しみを伝えて言うには、

「わたしは今までこのような苦しみを受けたことがない。

わたしは大神（おおがみ）であり、世界を創造したものであり、わたしのうちに隠されたことばをもつものだ。

しかし今まで、これほどの苦しみを受けたことがない。

これは火であろうか。

これは水であろうか。

わたしの心臓は火にのせられたようであり、わたしは体じゅうがふるえる。」

　

　

すべての神々が苦しむ太陽神のところへやって来て、これを見て悲しみました。イシスもここへやって来て、太陽神に向かって言うには、

「おお、太陽神よ、何が起こったのです。

ヘビがあなたさまをかんだというのですか。

それでは、わたしは言霊でそれをなおすことができます。

わたしが発することばは生命（いのち）の息なので、病気をうちまかすことができます。」

　

　

太陽神がイシスに向かって言うには、

「わたしは毎日のように二つの地平線のあいだを通り、わたしが創造したものをながめているうちに、目に入らなかったヘビによってかまれたのだ。

そしてその苦しみは火のようであり、水のようなのだ。それは火より熱く、水より冷たいのだ」

　

　

イシスが太陽神に向かって言うには、

「おお、太陽神よ、あなたの本当の名、隠されたことばをお教えください。そうすれば、その名によって、あなたさまは救われるでしょう。」

　

太陽神がイシスに向かって言うには、

「わたしは天と地の創造者、山と水と海の創造者、愛の源である《母なる牝牛（めうし）》の創造者、二つの地平線の創造者、神々に魂をおき、目を開いた者、ナイル川に水をもたらす者、時間と日と年の祭日をきめ、ナイルの洪水を生ぜめた者、火をつくり、家に食物を用意する者、朝はヘぺラー、昼はラー、夕方にはトゥムと呼ばれる者だ。」

　

　

しかしヘビの毒はさらに太陽神の奥深くにまわり、大神はますます弱ってきました。

イシスが太陽神に向かって言うには、

「今言われたことは、すべて、あなたさまの本当の名ではありません。

それをおっしゃれば毒は消え去ってしまうのです。」

　

　

太陽神の体内の毒はいっそう烈しくなり、太陽神はさらに苦しみながらイシスに向かって言うには、

「わたしは、わたしの本当の名がわたしからイシスに伝わることに同意しよう。」

それから太陽神は神々のあいだから姿を消し、神聖な船のなかの太陽神のご座所は空（から）になりました。

そして時が満ちると、太陽神の本当の名、隠されたことばがイシスに伝えられたようです。

イシスが息子ホルスに向かって言うには、

「大神は彼の二つの目（つまり太陽と月）にかけて誓われました。」

それからイシスは言霊の術をつかって言うには、

「おお、毒よ、ラーから出て消え失せよ。

おお、ホルスの目よ、神から出てきて彼の口を照らせ。毒を消すのはわたしだ、わたしだ。大神の名によって、消え去れ。ラー神の生命存（いのちなが）らえんことを。毒よ、消え去れ。」

　

　

こうしてイシスは大神の座につき、ラー神の本当の名を知る大女神として崇拝されています。

　